【第六話】ハマオ号、とうとう契約

 

こうやって文章にするとあっと言う間と言うか、なんだそんな道のりでもないじゃんと思われるだろうが、ここまで来るのには長い年月があった。そう、私たちが出会ってからの年月と同じ位なのである。
決まる時と言うのはあっと言う間なんだろう。リッキーとの時もそうだった。出会ってすぐに我が家に迎え入れた。ジンに至っては、出会った翌日である。そう、決まる時というのは、早いのである。もうそうなるように運命が決まっているのだろう。

いわどんのハマー熱は本当に長かった。モノがモノだし、金額が金額だけに、周りからも「どうせ口だけだろう」と半分冷やかしの目で見られていた。私もそう思っていた。でも、彼は今まで口に出したことは、着々と実行していっていた。それでも、日本の、しかも東京の生活ではハマーは無理だろうと考えていた私は、さすがに今回は実行しないだろうと思っていた。私自身、ハマーと言う車は嫌いではない。男らしいし、カクカクしたデザインが好きな私には持ってこいの車である。私たちがアメリカやカナダに住んでるのであれば、ハマーをゲットしても文句は言わないし、即OKしていると思う。でもここは日本、しかも東京の下町である。

ディーラーから戻ったいわどんは、「どうしようかなぁ」と考えていた。でもどうやら心では決めていたようにも思う。私だけが「どうするの?」「ほんとに買うの?」「やっていけるの?うちは」とジタバタしていたようである。いつもそうだ。ジンの時も私一人が悩んで「本当に飼うの?」「2匹育てていけるの?」といわどんに問い詰めた。でも、いわどんは「なんとかなるさ」と言い、自分は既に飼うことを決めていたのである。今回も、どうやらそう言う気配が感じられた。ただ、ローンが通るかどうかという問題が残っていた。
我が家は二人とも会社勤めをしていない。いわどんは個人事業主なのだが、初めて間もない事もあり、なかなかローンを組めない状態なのである。ローンが通らなければ、いくら気持ちやこちらの状態が受け入れ万全でも、買うことができないのである。

翌日、ディーラーさんに電話でいわどんは言った。

「買う方向で考えてます」

と。あ〜とうとう買うのね。で、マジで我が家の前の道路は通れるの???

買う方向で話を進める事になったのはいいが、次はローンの問題がある。取りあえず、ローンを組めるのかどうか審査してもらうことにした。が、これがまた、ずいぶんあっさりとローンが組める事がわかった。これで取りあえず契約ができる。と、とうとう契約してしまったのである。

ところで、契約したのはいいが、すぐには納車できない理由がいくつかあった。まず駐車場の問題。我が家の前を借りれることになったのだが、前借り主の期限は11月末までであった。ナンバーを取るのに車庫証明が必要で、車庫証明を取るには、そこが空いてないと取れないのである。次に、我が家は11月はアメリカ&カナダの出張で留守にしてしまうと言う問題があった。いずれにしてもすぐには納車できない事が判明。帰ってきてからすぐに納車できるよう、やれる事はやってから出かけようと言う事になった。

まずは、車庫証明。いわどんと私がきっちりと計ったサイズだと、ハマーは問題なく入る。が、もしいい加減に計っていて小さめの数字なんかで登録されていると、車庫証明が取れないのではないかと言う不安が生じた。現に、ギリギリなのである。どういう計り方で登録されているのだろうかと思い、管轄の警察署へ行く。すると大変な事がわかったのである。まず、我が家の前の駐車場の持ち主の名前が裏の叔父さんになっており、しかも登録者は前借り主なのである。いわどんのお父さんは、車庫証明は出してないと言い、管理をしている不動産屋も出してないと言う。と言うことは・・・借り主が勝手に出した?しかも印鑑とか名前とか適当に書いて出した事になる。警察はそう言う事は民事になるので、こちらは全く関与しないと言う。で、車庫証明はとにかくそこを登録している人が新しい所に車庫証明を移さない限り、同じ所では取れないと言う。OH MY GOD!! なんじゃそりゃ!である。結局、警察いわく「新規で登録すればいいのでは」と言う事で、必要書類を教えてもらい、新規に登録する事にした。その際不動産屋からは「11月30日を持って契約終了」みたいな一文を書いた書類ももらい、これでなんとか申請する事ができそうである。駐車場問題はクリアした。

そして私たちはアメリカ&カナダ出張に旅立って行った。

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